仄かに香るメロウ

「もう診察は全部終わったのか?」
「うん、あとは会計して薬貰って帰るだけ。」
「俺も今日は午前診療だけで、これから帰るところだから、一緒に帰るか?」
「うん、じゃあ薬貰ったら裏口の玄関付近で待ってるね。」

わたしたちはそんな会話をすると、藍は帰る支度へ向かい、わたしは会計を済ませて、処方箋を持ち、薬局へ向かおうとした。

すると、「ねぇ。」と呼ぶ声が聞こえ、ふと声のする方へ振り返る。

そこには、白い看護服を着たショートボブの女性が立っていた。

「はい、、、わたし、ですか?」

呼ばれたのが自分なのかと確認すると、その看護士さんは不服そうな表情で「あなた、よくうちの病院に通院してるわよね。」と言った。

「はい、膠原病科と心療内科に受診してます。」
「あなた、藍先生狙いなの?」
「えっ?」
「もしそうなら、やめておきなさい。」

ふとその看護士さんの名札に視線を落とすと、"岡田"と書かれていた。

岡田さんは「忠告したからね。」と言い残すと、バインダーを抱えながら立ち去って行った。

あの人、藍のことが好きなのかな?

もしかして、さっきLINE交換して欲しいって言ってた人?

きっと、藍とわたしが話してるの見てたんだなぁ、、、

「怖い怖い。」

わたしはそう呟きながら、薬局へ向かったのだった。

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