私たち幸せに離婚しましょう――契約結婚のはずが、エリート脳外科医の溺愛が止まらない――

 

 主真さんは、今日もオペがある。

 夕べも食事のあと、自室に籠もってしまったから、なにか調べ事でもしていたんだろう。

 最近彼は、出かけた先でお土産を買ってきてくれる。

 ケーキや焼き菓子など。事務のみんなで食べたらいいと菓子折だったりするのだ。

 雰囲気もさらに柔らかくなり、フランクに話しかけてきたり。

 夕べは『沙月、今度飲みにでもいかないいか?』などと誘われた。

 断る理由が思いつかなくて、にっこりと微笑んで『はい』と頷いた。

『じゃあ、次の日もオンコールがない日にしよう』

 行きたいと思った。
 なんだったらオンコールもなにも関係なく、今夜にでも。

 そう思う気持ちと、行ったらもっと彼に惹かれてしまうからダメだという気持ちが、沙月の中で綱引きを始める。

 引いて引かれて、
 勝ったのは行きたい気持ちだった。

 こんな調子で、まだあと一年ちょっとあるのに大丈夫なのか。

 最後は笑ってさよならが言えるのだろうか。

 自信はどんどんなくなってくる……。

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