私たち幸せに離婚しましょう――契約結婚のはずが、エリート脳外科医の溺愛が止まらない――
 帰る道中、車の中で主真はポツリと呟いた。

 なぜ言ってくれないのか。

 彼女の思い描く未来に、自分がいないから?

 ふいにそんな考えが脳裏をよぎり、胸が重苦しくなる。

 途中スーパーで豆乳鍋の素と、袋に書いてある材料を買い物カゴに入れる。しゃぶしゃぶもいいが、肉で栄養をつけるのはもう少し後だ。今の彼女の胃には豆腐のほうがいい。

 デザートにカットフルーツとゼリーを買う。

 今週末はオンコール待機はないから、沙月の体調がよければ買い物に行こうと誘ってみようと思った。

(あ、もうすぐクリスマスか)

 信号待ちの合間にショーウィンドウの飾り付けに目を留め、今更のように気づいた。

 クリスマスは結婚記念日だ。



 


< 134 / 166 >

この作品をシェア

pagetop