私たち幸せに離婚しましょう――契約結婚のはずが、エリート脳外科医の溺愛が止まらない――
 とはいえ、二年という期限付きの自分たちの場合は、これくらい疎遠でちょうどいいのだと、申し訳なさに蓋をした。

「主真さんのご家族は仲がいいんですね」

「ん? そうかな。みんな好き勝手して忙しいし、滅多に顔を合わせないからだと思うぞ」

 沙月は微笑みを返したが、そういう問題ではなく、醸し出る雰囲気で感じたのだ。

 もうすぐ到着する我が実家とはまったく違う。

 華子の冷えた笑みを思い浮かべ、沙月の胸は塞ぐ。

「沙月はときどき帰っているんだよな?」

「はい。父が退院してからはお見舞いがてら」

 主真の帰りが遅いとわかっているときは、仕事帰りに顔を出している。

 ゆっくりとだけれど、父の体調は着実に良くなっている。それだけが救いだ。

「お義父さん、正月を家で迎えられてよかったな」

「はい!」

 思わず大きくうなづく。

 もし父が入院したままだったら、どれほど気が重かったか。

「本当によかったです」

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