私たち幸せに離婚しましょう――契約結婚のはずが、エリート脳外科医の溺愛が止まらない――
「なぁ沙月。こう言ってはなんだが、お継母さんは、あれだ。性格の悪さが滲み出てるよな」

(えっ?)

 ギョッとして振り向くと、ちらりと沙月を見た主真はクスッと笑って左手を伸ばし、アームレストにある沙月の手に重ねた。

「虐められたら正直に言うんだぞ。俺が懲らしめてやる」

 ふざけた物言いに、あははと笑った。

 ああ、そうかと思った。

 誕生日に食事に行ったときに、あまりうまくいってないような話をしたのだった。あのとき以外はぞの手の話をしていないが、彼は気にかけてくれていたのだ。

「忘れるなよ。俺はどこまでも沙月の味方だ」

(主真さん……)

 沙月の手をポンポンと軽く叩く。

 主真の温もりが、心臓の高鳴りとともにジンジンと心に伝わってくる――。

 主真と沙月は、ある意味で本当の夫婦に一歩近づいた。

 一線を越えたのだ。

『お礼のプレゼントなら、君をくれないか?』

 まさかあんなことを言われるなんて思わなかった。

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