私たち幸せに離婚しましょう――契約結婚のはずが、エリート脳外科医の溺愛が止まらない――
言うだけ言って、鼻で笑った美華は、最初から手伝う気などないのだろう。椅子に腰を下ろし、ネイルを施した爪をしげしげと眺める。
「それで、なにを用意すればいいですか?」
リビングにある十人がけのダイニングテーブルにはお節料理と取り皿に箸、グラスも並んでいた。
「ワインよ」
主真は今日はオンコールなので、念のためアルコールは取れない。
「うちに来る日だってわかっていて、なんなの? お正月だっていうのに常識がないわね」
ぐちぐちと文句を言われ続ける。
沙月が考えて熱湯で作ったおしぼりを用意すると、嬉々として美華が持っていき、沙月が氷を入れて整えたわいクーラーは華子が持つ。沙月はまるでなにもしなかったように、手ぶらでリビングに戻った。
「はいどうぞ」
「ありがとう」と、父。
ふたりが甲斐甲斐しく父に寄り添う様は、散々見慣れたはずなのに、沙月の胸は複雑に揺れる。
それでも主真と目が合うと、それだけで気持ちが落ち着いてきた。
彼の柔らかい笑顔は。すべての闇を祓うだけの清々しさがあったから……。
「それで、なにを用意すればいいですか?」
リビングにある十人がけのダイニングテーブルにはお節料理と取り皿に箸、グラスも並んでいた。
「ワインよ」
主真は今日はオンコールなので、念のためアルコールは取れない。
「うちに来る日だってわかっていて、なんなの? お正月だっていうのに常識がないわね」
ぐちぐちと文句を言われ続ける。
沙月が考えて熱湯で作ったおしぼりを用意すると、嬉々として美華が持っていき、沙月が氷を入れて整えたわいクーラーは華子が持つ。沙月はまるでなにもしなかったように、手ぶらでリビングに戻った。
「はいどうぞ」
「ありがとう」と、父。
ふたりが甲斐甲斐しく父に寄り添う様は、散々見慣れたはずなのに、沙月の胸は複雑に揺れる。
それでも主真と目が合うと、それだけで気持ちが落ち着いてきた。
彼の柔らかい笑顔は。すべての闇を祓うだけの清々しさがあったから……。