私たち幸せに離婚しましょう――契約結婚のはずが、エリート脳外科医の溺愛が止まらない――
 クリスマスの夜、沙月を抱いた。

 プレゼントに君が欲しいだなんて、ベタすぎるセリフをよくも言ったもんだと我ながら思うが、まったく後悔はしていない。

 気持ちは抑えられなかった。

 できれば沙月も同じ気持ちだったと願うばかりだが……。

「ならどうした」

 順調だとは思っている。

 だが、沙月の心を掴みきれていない気がしてならない。

 あれきりにしないために、なんだかんだと言い寄り抱いているし、沙月は応えてくれるが、時折見せる遠くを見る彼女の視線が、心を騒つかせるのだ。

 打ち寄せる波に乗って、沙月はどこか遠くに行ってしまうんじゃないか……。

(ダメだ。そんなのは許せない)

 浮かんだ情景に恐怖して、喉の奥がゴクリと音を立てた。

「なぁ仁。お前、本気で恋をしたことはあるか?」

 彼の周りにはいつも女がいる。

 大抵一年と持たず、どの恋人ともいつの間にか別れているのだが、かと言って彼女たちを蔑ろにしている印象はない。

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