私たち幸せに離婚しましょう――契約結婚のはずが、エリート脳外科医の溺愛が止まらない――
 恋多き彼は、心を自在にコントロールしているのだろうか。

「いきなりだな」

 笑った仁は肩をすくめる。

「あるよ。本気の恋。――叶わなかった恋だがな」

「えっ?」

 てっきりいつだって本気の恋をしているとでも答えると思っていた主真は、思わず聞き返した。

 しかも叶わなかったとは。

「フラれたのか? お前が?」

「ああ、告白する機会すらなかったよ」

「じゃあ、今の恋人のことはどう思っているんだ」

 仁は臆面もなく「愛してるよ」とさらりと言った。

「それはあれか? ドーパミンとアドレナリンの働きを無視してオキシトシンが――」

 恋愛の初期段階では内側眼科前頭野(ないそくがんかぜんとうや)、内側前頭前野(ないそくぜんとうぜんや)でドーパミン神経が活性化する。そしてオキシトシンは愛情ホルモンと呼ばれるが――。

 考え込む前に、ゲラゲラと仁が笑った。

「なに分析しているんだよ。まあ俺はいいとして、主真。お前は、かわいい奥さんに恋をしてるってことか?」

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