私たち幸せに離婚しましょう――契約結婚のはずが、エリート脳外科医の溺愛が止まらない――
 ゆらゆらと仁の手で揺れるグラスの中の紅いワインを見つめながら苦笑する。

(ああ、そうだよ)

 そして、この感情を持て余している。

 脳が関係しているとわかったところでどうしようもない。

「なぁ主真。恋って辛いだろ」

 クスッと笑う仁に返す言葉がない。

「努力でどうこうできないからなぁー」

 仁が言う通りだ。努力でなんとかなるならいくらでも努力する。

 自分ではどうにもならないから、こんなに恋い焦がれるのか?

 辛いな、ああ本当にと思いながら、主真はがっくりと頬杖をついた。


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