私たち幸せに離婚しましょう――契約結婚のはずが、エリート脳外科医の溺愛が止まらない――
これまでもアツ・ヘルスとは付き合いがなかったので、なんの情報ももっていない。
『夫人が理事長代理でいる以上、動向は気にかけておいたほうがいいかもな』
『そうだな……』
継母と娘。
二年でいいから結婚してほしいと、切羽詰まっているように見えた沙月。
彼女が抱えている問題は、薄羽病院の経営不振だけではないかもしれない。
考えてみると継母、華子と一緒にいるときの沙月は、いつも伏し目がちで自分からは口を開かなかった。
華子は言葉遣いといい身なりといい、いかにも上流階級の婦人といった雰囲気を漂わせているが、正直言って最初から主真の嫌いなタイプの人物だった。
かといって、嫌うだけのはっきりとした理由があるわけじゃない。彼女の猫なで声や、抜け目なく探るような目つきから、あくまでも感覚的に嫌悪感を覚えるだけだが。
ともかく、そのときに決めたのだ。
結婚し、彼女が妻である以上、夫として守る義務はある。薄羽病院だけでなく、沙月自身の助けにもなろうと心に誓った。