私たち幸せに離婚しましょう――契約結婚のはずが、エリート脳外科医の溺愛が止まらない――
 なにを着ていこうかと、わくわくしながら楽しみにしていたのも束の間、あれからももう一週間が経っている。

 彼は週末の休みにも用事があって出掛けてしまったし、あの約束は幻になってしまうかもしれない。

 それでもいいと沙月は思った。

 付かず離れず。今くらいの関係がちょうどいい。

 お互いに一緒にいても疲れない距離感。必要以上にドキドキしたり、余計なことを考えなくて済む関係が、期間限定の自分たちの夫婦の形に合うのだから。



 主真に遅れて出勤すると、すぐに内線があり、華子に呼ばれた。

 憂鬱な気分を抱え理事長室に向かう。

 最近になって、華子の動きが顕著になってきている。

 華子の実家が経営している医療系商社アツ・ヘルスの社長は華子の弟なのだが、最近頻繁に、理事長室に出入りしている。

 事務長に聞いた話では、アツ・ヘルスから新しいMRIを購入しようと画策しているらしいのだ。

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