私たち幸せに離婚しましょう――契約結婚のはずが、エリート脳外科医の溺愛が止まらない――
 とりあえず午後早退して、父のお見舞いに行こうと決めた。

 予定はしていなかったが、行くしかない。



 早退を申し出た沙月は、昼食を済ませて早速父が入院する病院に向かった。

 郊外の静かな病院に沙月の父はいる。

 青ノ葉大学病院を退院いた後は、父の友人の心臓外科医が経営する病院に入院している。

 手術は成功したし、父の経過は順調で、あと二カ月後の年明けには復帰という予定だ。華子父に復帰を考えず家でゆっくりしてくれと言っているようだが、沙月は少しずつでもいいから病院に戻ってきてほしいと思っていた。

 薄羽の将来について父はどう思っているのか、ちゃんと聞いたことがない。

 父が理事長に復帰したとして、その先はどうするのか。

 薄羽という姓を捨てて青葉になった沙月には、もうとやかく言える立場にはないのかもしれない。

 だからといってこのまま華子や美華の手に渡ってしまっていいのか。自分勝手な継母の行動を見る限り不安は尽きないのだ。

(でも、わからないんだよね)

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