私たち幸せに離婚しましょう――契約結婚のはずが、エリート脳外科医の溺愛が止まらない――
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「あら、主真さん」

 振り返ると、そこにいたのは理事長代理で義母の華子だった。

「おはようございます」

「主真さん、凄いわね。あなたのおかげで薄羽もなんとか持ちこたえてそうよ」

 キツい香水に顔をしかめたくなるのをこらえて、薄く微笑む。

「そうだといいんですが」

「ねぇ、たまには家に来てくださいな。少しでいいから美華相談についてのってあげて欲しいのよ。いろいろ悩んでいてね」

「まぁ……悩みは絶えないですよね」

 適当に相槌を打つ。

「沙月はちゃんとやっているの? あの子は家事を知らないまま結婚したから心配で。家政婦を雇う話はどうなったのかしら」

「ああ……」

 どう答えたものか迷っていると、「あの子も働いているんだし」と畳みかけてきた。

 なぜ家政婦にこだわるのか。

 ふと仁が『監視だろ』と言ったのを思いだした。

 子どもに親が家政婦を送るのは監視の目的もあるのだと。

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