私たち幸せに離婚しましょう――契約結婚のはずが、エリート脳外科医の溺愛が止まらない――
 もしかすると、なにも期待せず、頼るは自分のみという暮らしが身についているのかもしれない。

(それが俺が感じる心の壁になっているのか?)

 だとしたら粘り強く行動するしかない。

 沙月のために。彼女の力になると決めたからには、まずなにをすべきか。

 彼女がなによりも大切に思っているのは、やはり薄羽病院だ。

 彼女の父が理事長として復帰するとは決まっているが、その先を考えたとき、沙月が継がなければ華子や美華になる。そんな未来は闇しか見えない。

 引き続き仁にはアツ・ヘルスについて調べてもらっているが業績不振なのは確かなようだ。

 となれば華子と華子の実家は悪縁でしかなく、人柄をみても薄羽にとってプラス要素は何一つない。やはり沙月を支えて自分が本腰をいれるしかなさそうだ。

(病院経営か)

 なにしろこれまで病院の経営については興味がなかった。青ノ葉大学病院は主真の兄が引き継ぐと決まっているし、開業する気もないので、必要を感じなかったのだ。

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