私たち幸せに離婚しましょう――契約結婚のはずが、エリート脳外科医の溺愛が止まらない――
 振り返ると朝井慎一郎がいた。

「久しぶり」と微笑む彼とは同期の医師だ。

 青扇記念病院での研修医時代に親しくなり、アメリカに武者修行に出た時期も同じだったのもあって、会えば自ずと話が弾む。

 主真は脳神経外科医、慎一郎は心臓外科医だ。お互いに忙しい身の上なので、個人的に連絡を取り合ってはいないが、こうしてときどき顔を合わせ親交を深めてきた。

 前回会ったのは春先だったから、半年ぶりか。

「珍しいな。主真はこういうテーマに興味はないかと思ってたが」

「まぁ、ちょっとな。そういえばお祝い言ってなかったな、結婚、おめでとう」

 主真が結婚して数カ月後に彼も結婚した。

「ありがとう。結婚祝いもありがとうな。彼女がとても気に入ってるよ」

 主真がタオルを贈った。

「うちの奥さんがタオルを貰ってうれしかったって言ってたんだ。俺には思いつかなかったが、喜んでもらえたならよかったよ」

 沙月に結婚祝いでもらったものでなにがうれしかったか聞いたら『タオル』と答えたのだ。

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