私たち幸せに離婚しましょう――契約結婚のはずが、エリート脳外科医の溺愛が止まらない――
 だが、彼も主真と同じで、群がる女性を鬱陶しがり寄せ付けなかった。

 恋愛結婚とは結び付かない男だと思っていたが、違ったのか。

「出会ってしまったんだよ」

 ニヤリと口角を上げる慎一郎を、主真はギョッとして見返した。

「そう驚かなくてもいいだろ? 青葉だって奥さんが気に入ったから、結婚したんだろうに」

 彼は主真と沙月が政略結婚だと知っている。二年契約だとも、彼には伝えてあった。

「うちはほら、期限つきだし」

 言いながらズンと心が重くなる。

「その条件だって、奥さんだから引き受けたんだろ? よく考えてみろ。例え条件があるにしろ、友人すら家に呼びたがらなかったお前が同居を受け入れたんだ。よほどのことだぞ?」

 慎一郎の言うとおりだった。主真は友人を家に呼ぶのを嫌った。

 今でも変わらない。友人たちがふざけて新居に招待しろと言ってきても、呼ぶ気はさらさらない。

 特に孤独が好きなわけでも、さほど潔癖症でもない。単に我が儘なのかもしれないが、嫌なのだ。

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