私たち幸せに離婚しましょう――契約結婚のはずが、エリート脳外科医の溺愛が止まらない――
 休みに向けて不安要素を取り除くため、なんだかんだと遅くなってしまった。

 明日は土曜で沙月も休みだ。今度こそ彼女を夕食に誘おうと思いながら駐車場へ向かう。

 どんな結婚にしろ円満な結婚生活を送るには、妻へのサービスを忘れちゃいけないと、慎一郎にアドバイスをされた。

『なんにせよお前のたったひとりの妻なんだ。大切にしてやれよ』

 言われなくてもそのつもりだ。彼女の支えになると決意したし考えて、ハッとした。

(あ、食事、延期したままだ)

 食事だけでは足りないか、などと考えつつ歩いていると、出口で守山と出くわした。

「お疲れ様です」

「ああ、お疲れ様です」

 お互いに軽く挨拶をする。向かう先は同じ駐車場なので、なんとなく話しかけた。

「守山先生は薄羽にきて何年ぐらいなんですか?」

「五年になるかな。軽い気持ちで来たんですが薄羽先生に惹かれて結局そのまま」

「そうでしたか」

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