私たち幸せに離婚しましょう――契約結婚のはずが、エリート脳外科医の溺愛が止まらない――
 ならばと、主真はベッドの布団を捲り上げ、沙月を抱いて運ぶことにした。

 忙しい脳神経外科医にとって強靭な体力は必須である。長時間に及ぶ手術に耐えられるよう隙をみて体を鍛えている主真にとって、寝ている女性ひとりを運ぶのに躊躇はなかった。

 そっと沙月の腕を取り、背中に手を回して膝の後ろを抱え込む、

 熟睡している彼女はぐらりと頭を揺らしただけで、夢の中に入ったままベットに横たえられた。

 そっと手を外し、ふぅと息を吐いた主真は、沙月に布団をかけようとしてハッとした。

 彼女の胸元のボタンが外れて大きく開いている。

 下着をつけていないヌードな胸が半分ほど露わになっていた。

 着痩せするタイプらしく、思いがけず豊かな胸に目を奪われ、慌てて視線を外す。

 ボタンを留めようかと迷ったが、そのまま布団を掛けた。

(やれやれ)

 体はともかく、化粧をしていない沙月の寝顔は無垢で、なお一層幼く見える。

 ふと守山が思い浮かび、腹の底からむくむくと不快感が込み上げた。

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