私たち幸せに離婚しましょう――契約結婚のはずが、エリート脳外科医の溺愛が止まらない――


「んん……」

 目を覚ました沙月は、違和感を覚えた。

 いつ布団に入ったのか思い出せない。

 最後の記憶は……本を読んでいて眠くなってしまったところまで。と考えてハッとして飛び起きた。

 まさか、主真がベッドまで運んでくれたのか?

 時計を見ると朝の七時。

 ひとまず起きてガウンを羽織りリビングに行くと、すでに主真は起きていた。

 ソファーに座る後ろ姿が見える。

「おはよう、ございます」

「ああ、おはよう。コーヒー飲む?」

「あ、は、はい」

「じゃあ、淹れておくから」

 動揺のあまり「はい」とうなずいて洗面所に向かった。

 顔を洗って歯を磨きながら、もう一度よく考える。

 自分でベッドに行った可能性はあるのか、ないのか。

 限りなく低い可能性に頭を抱えながら、着替えて簡単に化粧をする。

 リビングに戻ると、コーヒーのいい香りがした。

「どうぞ」

「――ありがとうございます」

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