春、君と恋に落ちる
カメラマンが準備でまだいない間、蒼くんと2人で桜を見つめる。


「この時期になるとさ、思い出すね。晴ちゃんがステージ上で新入生に挨拶してた時と、卒業式の日」

「私も覚えてます、蒼くんが先生達に押さえつけられてた日」

「そんなこともあったよね」


2人で笑いながら思い出を話す。

何にも期待してない、むしろ周りを恨んですらいるような冷たい目が今はこんなにも優しい目をしている。

人って変わるなあ。


「おふたりさーん!そろそろ撮りますよー!」


カメラマンの言葉にそちらを見ると「はーい」と挨拶をして離れようとする。

すると腕を引かれて唇に軽く柔らかいものが当たる。


「愛してるよ」


こんな言葉にいまだに照れてしまう。


「…私も愛してます」


小さな声だったけどそう伝えると蒼くんはまた優しく笑いかけてくれる。



​───────やっと、俺のだ。



どこにも行かないでと言っていた蒼くんの悲しい顔はもうどこにもない。

私といて幸せだと笑ってくれる君の笑顔が大好きだ。

またこの季節に君に何度でも恋に落ちる。







『春、君と恋に落ちる』𝕖𝕟𝕕 𓂃 𓈒𓏸
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