春、君と恋に落ちる
「…俺、晴ちゃんだけは離したくない。」

「何で、何で私。」


動揺する気持ちでそう質問すると、蒼くんはふっと笑う。


「だって俺達、一緒じゃなきゃひとりぼっちになっちゃうでしょ?俺の事1番分かってくれるのは晴ちゃんで、晴ちゃんを1番分かってあげられるのは俺だよ」


お互いに何も知らないのに、だけどお互い以外に誰も居ないことだけわかる。

惹かれ合うようにして見つめあった入学式のあの日から。

それでもこんな酷い縛り方、無い。


「…そんなこと」

「ないって言えちゃうんだ?じゃあ、試してみる?お互い離れて、耐えられるか。」

「え」


蒼くんは冷たい目をしていた。


「明日から話しかけないし、朝も昼も行かないから」


そんな一言から翌日から私は蒼くんと距離を置いた。
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