春、君と恋に落ちる
明日から夏休みなのに蒼くんと話せないまま終わりそうなんだけど。

勇気を出して1年の教室に向かって、1-Aのクラスを覗き込んだ。


「あれ?会長?どうかしたんですか?」


話しかけてくれたのはいつも蒼くんの近くにいる男子生徒だった。


「あ、の。蒼くんいますか?」


そう問いかけると少し驚いた顔するも、ニコッと人懐っこい笑顔をこちらに向けてくれる。


「待っててくださいね、蒼ー!客人ー!」


教室のドアから大きな声で呼ぶのが聞こえて、壁際に姿を隠す。

呼び出してもらったのはいいけど、何を話せばいいんだろ。


「誰?」


久しぶりに聞く蒼くんの声に緊張する。


「蒼も待ってた人だと思うよ」


蒼くんが教室から出るのを見ると、目が合って顔が赤くなるのを感じる。


「…あ、蒼くん」

「晴ちゃん」


その呼び方もなんだか久しぶりに聞いた気がする。

名前を呼ばれるだけでこんなに嬉しいなんて、思わなかった。


「…あ、の。」


話したいことがあってきたのに上手く声が出ない。

どうしよう、このままじゃただ待たせているだけだ。
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