春、君と恋に落ちる
「あれ、かいちょー?見逃してくんない?喧嘩売ってきた奴の喧嘩買っただけだから」


体育館裏にある体育倉庫室に物品整理に来たらこれだった。

朝の素行不良生徒。

目の前には私と同じ学年の生徒が首元を掴まれていた。

ボコボコの状態で。

何で関わらないって思ってた矢先にこうなるのか。


「…先生に報告はしませんが、喧嘩はダメです。その生徒から手を離してください。」


そう声にするも、私の声は震えていた。

怖い、だけどここで見逃すのはダメ。

せっかく譲られた生徒会長、前生徒会長にガッカリされたくない。

それにここで見逃して逃げたらきっと後悔する。


「俺が怖いのに注意するの?かわいー」


震える声の私を冷たい目で見て揶揄う様に言う。

気に入らないことしたら殴られそうな、そんな感じ。

彼は胸ぐらを掴んでいた手を離すと、パンパンと手を叩きこちらに近付いてくる。


「…名前、晴ちゃん?」

「は?」


思わぬ問いかけと、まさかの名前を覚えられていたことに驚いて情けない声が出る。
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