春、君と恋に落ちる
Episode3
ワイシャツは相変わらずズボンの中にしまわれることなく、放り出されている。

またいつものピアスとその着こなしはきっと怒られてしまう。


「蒼くん、おはようございます」

「久しぶり、晴ちゃん」


私の方を見ると、蒼くんは無表情でこちらを見た。


「ごめんなさい、海行けなくて。」

「…ううん、それよりも1回しか電話できなかったことのが悲しい」


気のせいだとは思うけど、物凄く垂れた耳としっぽが見える。

喧嘩売られたらすぐ人を殴っちゃうような不良学生なのに、時々可愛い。


「夏休み喧嘩しませんでした?」

「喧嘩しなかった、偉い?」

「偉いです」


そうだ、今蒼くんは喧嘩やめたんだ。

どうして?と聞いたことがあったけど、その時は確か


「学校行けなくなったら晴ちゃんに会えなくなる」


と本気か嘘か分からない言葉を吐かれてしまって。

私の喧嘩はダメという言いつけを守っている。
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