春、君と恋に落ちる
「桜木は決めてるの?」

「はい、とりあえず県外って事だけ。」


先輩は少し驚いた顔をした。


「え、なんで県外?」

「遠くに行きたいんです、親も同級生も誰も知らない所に。」


今の学力さえ維持出来たら多少選べるだろう。

寮に入るも、一人暮らしするもいい。

あと1年と少し耐えれば、自由になれる。


「…そっか」


そう呟く先輩の横で考えたのは椎名くんのこと。


『このまま2人でどこか行けたらいいのにね』


そんな風に言った彼の言葉を思い出していた。

私なんかと一緒に連れてなんていけない。

蒼くんはこのままお友達や、いつか離れずにずっと一緒に居て好きで居てくれる人と一緒に居たほうが良い。

どう願っても私は再来年にはこの街には居ない。
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