春、君と恋に落ちる
「晴ちゃん」


後ろから聞き馴染みのある声がして、振り返る。


「あ…、椎名くん」


少し怒ったような表情でこちらまで寄れば私の腕を引っ張る。


「いたっ…」

「結局、こういう優しい男が好きなの?」


結城先輩の事を睨みつけている。

あ、まずい。この目は。


「ダメ!」


そう叫んだ頃には手を離して、結城先輩に殴りかかっていた。

1発殴って胸倉を掴むと、冷たい目をこちらに浴びせる。


「俺、晴ちゃんの言うこと聞いてたよね。なのに、晴ちゃんは俺を捨ててこの男を選ぶんだ?本当、ムカつく」


もう1発殴ろうと振りかざした椎名くんの腰元に抱き着く。


「ダメ!やめて!」

「…晴ちゃんだけは、ずっと居てくれるって思ってたのに」


そんながっかりしたような傷ついたような声。

そう言うと先輩の胸元から手を離す。
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