『春・夏・秋・冬~巡る季節』
送信直後、またメールが届く。

春にしては早すぎる……と送信者を確認して……私は顔から笑みを消した。


送信者、夏──。


「夏……」


私の脳裏に、夏の言葉が蘇る。


『秋が好きだ』


まだ精神不安定で、警察病院に入院していた頃。

多分、毎日泣いては虚ろになる、という状態を繰り返していた私を見るに見かねて、出た言葉だったのだと……思う。

どうにか励まそうとして、そう、言ってくれたんだよね?

私をギュッと抱きしめて、優しく、囁くように紡がれた言葉。

弱った私の心は、その力強い腕に包まれることが心地よくて、そのまま身を委ねてしまいたかった。

けれど……過ぎったのは、春の笑顔。


私は、夏に甘えられない……。


咄嗟にそう判断して、夏の胸を押し返した。

だって、春が哀しむ……。

私は冬が……

冬が、好きなんだから。

消えてしまった今も、ずっと……。

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