奪われた命、守りたい心

６．突然の発覚

颯真は、いつものように春華の家を訪れた。デートを重ねる中でお互いの距離は縮まり、彼女の家に入るのも自然になっていた。

「適当に座っててね」と春華がキッチンへ向かうと、颯真はリビングを見渡した。ソファの横に散らばったファイルが目に入り、気を利かせて片付けようとしたその時──1枚の紙がひらりと床に落ちた。

「ん？これって……」

颯真の目がその紙に留まる。そこには「田辺総理」「不正疑惑」「裏取引」などの言葉が並んでいた。

驚愕した颯真が紙を手に取った瞬間、春華が急いで駆け寄り、ファイルごとそれを奪い返した。

「な、なにこれ？」颯真は眉をひそめる。

「……なんでもない！」春華は目を逸らし、声を張り上げた。

「なんでもなくないだろ！これ……田辺総理のことを調べてるのか？春華、まさか一人で……！」

「だから、なんでもないって言ってるでしょ！関係ないから放っておいて！」

春華は声を荒げるが、颯真は彼女の肩を掴み、真剣な眼差しで問い詰めた。

「放っておけるわけないだろ！君が危ない目に遭うかもしれないのに……春華、これは父さんの事件のことだよな？お願いだ、こんなこと、俺にだけでも話してくれ。」

「颯真さんには関係ないでしょ！」
春華の声は震えていた。



「関係ないだって？」颯真は怒りを抑えながら言った。「春華、俺は君のことが好きだ。だから、君がこんな危ないことをしているなら、止めたいんだ。」

「……私には、やらなきゃいけない理由があるの！」
春華の目に涙が浮かんだ。
「お父さんは、この世界の不正を許さずに命を懸けたのに、犯人が野放しなんて許せない。だから、私が真実を暴くの！」

「だけど、それで君が傷ついたらどうする？こんなこと、素人がやるべきじゃない。俺たち警察が──」

「警察が頼りにならないから、私がやってるの！」春華は颯真を睨みつけた。「お父さんが命を懸けたこの正義を、誰かが守らなきゃいけないの！」