奪われた命、守りたい心

８．あなたと歩く未来

春華は順調に回復し、ついに退院の日がやってきた。病院を出ると、彼女は久しぶりに自由な空気を胸いっぱいに吸い込み、颯真と一緒に歩きながら、少しずつ日常に戻る実感を味わった。その歩みは、どこか新しい一歩を踏み出すような、力強いものだった。

二人はお父さんのお墓参りに行くことにした。春華にとって、父親を失ってからの数ヶ月は辛く、そして何よりもお父さんに対する思いが募っていた。颯真はそんな春華を静かに支え、寄り添っていた。

お墓の前に立ち、春華は静かに手を合わせた。その顔には少し寂しさと、でも誇りを持っているような表情が浮かんでいた。颯真もまた、春華の横に立ちながら、彼女を見守っていた。

「お父さん、私は無事に帰ってきました。颯真さんと一緒に、これからも頑張ります。だから、どうか見守っていてください。」春華は静かに祈りながら、目を閉じた。

颯真はその姿を見つめながら、春華に対する気持ちがますます強くなっていった。彼女がどんなに辛い時期を乗り越えてきたのか、その苦しみを共にしてきたからこそ、今この瞬間を大切に思った。そして、心の中で決意したことがあった。

お墓参りを終え、帰り道を歩きながら、颯真はふと足を止めた。「春華、ちょっと待ってくれ。」彼は心臓が高鳴るのを感じながら、春華を見つめた。

春華は不安げに彼を見た。「どうしたの？」

颯真は深呼吸をしてから、春華に向かって膝をついた。彼女の驚いた顔を見つめ、言葉を紡いだ。

「春華、君は僕の大切な人だ。これからもずっと、君のそばにいたい。君がどんなに辛い時でも、どんなに遠くても、僕が必ず支える。そして、君を守り続けたい。だから、お願いだ。」

颯真はポケットから小さな箱を取り出し、開けるとそこには輝く婚約指輪があった。「春華、僕と結婚してほしい。君と一緒に、これからの未来を歩んでいきたい。」

春華は一瞬、驚いた顔をしたが、すぐにその目には涙が浮かんだ。彼女は颯真の手をしっかりと握りしめ、感極まって言った。「颯真さん…私も、ずっとあなたのそばにいたいです。だから、もちろん。」

その言葉に、颯真は顔を上げ、彼女の手を握り返した。「ありがとう、春華。これからもずっと、君と一緒に歩んでいくよ。」

春華は泣きながら笑顔を見せ、颯真もまた、涙をこらえながら笑った。二人はお互いに抱きしめ合い、未来を共に歩むことを誓った。