奪われた命、守りたい心
結婚式当日、穏やかな陽光が教会の窓から差し込み、厳かな雰囲気を漂わせていた。春華は純白のウェディングドレスに身を包み、手には父親の遺影を抱えていた。颯真の支えがあったからこそ、ここまで来ることができた。そして、この日は父親にも見守ってほしいという春華の願いが込められていた。
扉が静かに開き、バージンロードが現れると、参列者たちは一斉に立ち上がり、春華を見つめた。彼女は深呼吸をし、心を落ち着けながら、一歩ずつゆっくりと歩き始めた。
「お父さん、一緒に歩いてね。」心の中でそう呟きながら、春華は遺影を胸に抱きしめた。彼女の目には涙が浮かんでいたが、その表情は誇らしげで、幸せに満ちていた。
颯真は祭壇の前で、春華が近づいてくるのをじっと見つめていた。その目には、彼女に対する深い愛と感謝が溢れていた。彼は春華がどれだけのものを背負ってここまで来たのかを知っている。そして、これからは自分がその重荷を共に背負う覚悟を決めていた。
春華が祭壇に近づくと、颯真はそっと手を差し伸べた。春華は遺影を見つめながら、微笑んで言った。「お父さん、ありがとう。私、幸せになります。」
颯真が春華の手を取ると、二人は寄り添いながら、祭壇の前に立った。神父が誓いの言葉を述べる中、二人はお互いの目を見つめ、静かに頷き合った。
「颯真さん、これからもよろしくお願いします。」春華は涙ながらに微笑み、颯真も優しい笑みを返した。
「春華、僕はずっと君を守る。君が幸せでいられるように、全力で生きるよ。」
参列者たちはその姿を見守りながら、温かな拍手を送った。春華と颯真はその音の中、静かにキスを交わし、夫婦として新たな一歩を踏み出した。
その日の空は、まるで祝福するかのように青く澄んでいた。
結婚式を終えた夜、春華は少し緊張しながらも、達成感と幸福感に包まれていた。一日の疲れを癒すため、颯真が用意してくれた温かなバスルームに入り、ゆっくりと湯船に浸かった。ふわりと漂うアロマの香りが、心をほぐしていく。
「今日、本当に夢みたいだったなぁ……。」春華は湯気に包まれながら、式での幸せな瞬間を思い返していた。父の遺影を胸に歩いたバージンロード、颯真の温かな手の感触、そして誓いの言葉……。彼女の心は感謝と愛でいっぱいだった。
お風呂から上がると、リビングには颯真が待っていた。彼もシャワーを浴び終えたばかりのようで、さっぱりとした姿で、少し照れた笑顔を浮かべていた。
「お疲れさま、春華。」颯真はタオルを手に、春華を迎えた。
「うん……ありがとう。颯真さんも、すごくかっこよかったよ。」春華はほんのり頬を染めながら微笑んだ。
二人はリビングのソファでしばらく談笑しながら、結婚式の思い出を語り合った。緊張していた瞬間や、招待客の反応などを笑い合いながら、ゆっくりと時間を共有した。
その後、颯真はふと立ち上がり、春華の手をそっと握った。「そろそろ行こうか。」
「……うん。」春華は少しだけ顔を赤らめながら、颯真に手を引かれてベッドルームへと向かった。
部屋に入ると、優しい灯りが二人を包み込んだ。颯真は春華を抱き寄せ、そっと彼女の額にキスをした。
「今日から、本当に夫婦だな。」颯真の声はどこか誓いのようで、深い愛情が込められていた。
春華も彼の胸に顔を埋め、静かに頷いた。「うん……。これから、ずっと一緒だね。」
颯真は春華をそっと見つめ、その瞳に優しく触れるようなキスを落とした。その瞬間、二人の間にあった距離は消え去り、心も体もひとつになっていくようだった。
その夜、二人は結婚という新たな一歩を踏み出したことを深く感じながら、互いの愛を確かめ合った。春華は颯真の腕の中で、これ以上ないほどの幸せと安心感に包まれていた。