奪われた命、守りたい心

3.突然の別れ

⭐︎春華side☆

「お父さん、行ってきます!」

 玄関先で靴を履きながら声をかけると、キッチンにいた父、大和が振り返って笑った。

「おう、いってらっしゃい。父さん、今日少し遅くなると思うから晩御飯作らなくていいぞ。しっかり戸締りしてな」

「了解! お父さんも気をつけてね!」

 それが、私たちの最後の会話だった。







 夕食は簡単に済ませた。父が帰宅するまでの時間、リビングでテレビをつけたままぼんやりと過ごしていた。
大きな事件があったのか、ニュースでは繰り返し「銃撃事件」の速報を伝えている。だが、そのときの私は、どこか他人事のようにしか感じていなかった。

 そんなときだった。スマートフォンが突然震えた。画面には「颯真さん」の名前。

 ドクンッ
 胸が強く脈打つ。嫌な予感が押し寄せる。

 おそるおそる通話ボタンを押す。

「もしもし……?」

「橘です。仕事中に大和さんが撃たれて、意識がない状態です。すぐに病院に来てもらえますか?」

 颯真さんの声が沈んでいる。何かが胸の奥で崩れ落ちたような感覚がした。心臓が締め付けられる。

「……わかりました」

 返事をするのが精一杯だった。涙で視界が滲みそうになるのをこらえながら、家を飛び出した。
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