奪われた命、守りたい心
病院に着くと、颯真さんが廊下に立っていた。険しい顔つきで私に気づくと、申し訳なさそうに目を伏せる。
「橘さん。父は……?」
声が震えた。
「春華さん……ごめん。俺が側にいたのに助けられなかった……。」
その一言で、胸の奥にあった一縷の希望が崩れ落ちる。何か言いたいのに、言葉が出てこない。ただ、足を引きずるようにして病室の扉を開けた。
中に入ると、父がベッドに横たわっていた。まるで眠っているかのような穏やかな顔。けれど、揺さぶっても、何を言っても応えてはくれない。
「お父さん……お父さん! お父さん、てば……。一人にしないでよ……。」
涙が止まらない。声を上げて泣きながら父の手を握る。
「私の結婚式のバージンロードを歩くのが夢だったんでしょ? こんなところで終わってどうするのよ! お父さん、なんか言ってよ……ねえ……」
父の体は温かさを失いつつあった。それを感じるたびに、現実が私を苦しめた。
しばらくして、ロビーの椅子に座り込み、ぼんやりと天井を見上げていた。瞳から涙が乾ききらないまま、颯真さんが私の前に立った。
「春華ちゃん。本当にごめんなさい。」
頭を下げる颯真さんに、私は静かに首を振った。
「橘さんが謝ることじゃないです。父は最後まで責任を持って仕事をしてたんだと思います。それだけで十分です。」
そう言いながら、胸に渦巻く感情を整理するように問いかけた。
「……事件のこと、聞いてもいいですか? 撃った犯人は捕まっているんですよね?」
颯真さんは深いため息をつきながら、申し訳なさそうに答える。
「それが……逃走してまだ見つかってないんだ。俺が絶対に捕まえるから、安心して。」
「そうですか……。犯人の特徴とかって、どんな感じなんですか?」
私の問いに、颯真さんは一瞬口ごもる。そして、低い声で言った。
「ごめんね。被害者遺族には詳しいことは教えられないんだ。でも絶対、俺が捕まえるから。……だから、春華ちゃん。間違っても変なこと考えちゃダメだからね。」
私はただ頷くことしかできなかった。
颯真さんの言葉を聞きながら、私は天井を見つめていた。頭の中で何度も父との日々が思い返される。あの優しかった笑顔、叱られたときの真剣な顔、私を育ててくれたすべての時間。
父を奪った犯人がまだ自由の身だという現実が、私の心を苛んでいた。これからの私はどうすればいいのだろう。復讐心と理性が胸の中でせめぎ合う。
「橘さん。父は……?」
声が震えた。
「春華さん……ごめん。俺が側にいたのに助けられなかった……。」
その一言で、胸の奥にあった一縷の希望が崩れ落ちる。何か言いたいのに、言葉が出てこない。ただ、足を引きずるようにして病室の扉を開けた。
中に入ると、父がベッドに横たわっていた。まるで眠っているかのような穏やかな顔。けれど、揺さぶっても、何を言っても応えてはくれない。
「お父さん……お父さん! お父さん、てば……。一人にしないでよ……。」
涙が止まらない。声を上げて泣きながら父の手を握る。
「私の結婚式のバージンロードを歩くのが夢だったんでしょ? こんなところで終わってどうするのよ! お父さん、なんか言ってよ……ねえ……」
父の体は温かさを失いつつあった。それを感じるたびに、現実が私を苦しめた。
しばらくして、ロビーの椅子に座り込み、ぼんやりと天井を見上げていた。瞳から涙が乾ききらないまま、颯真さんが私の前に立った。
「春華ちゃん。本当にごめんなさい。」
頭を下げる颯真さんに、私は静かに首を振った。
「橘さんが謝ることじゃないです。父は最後まで責任を持って仕事をしてたんだと思います。それだけで十分です。」
そう言いながら、胸に渦巻く感情を整理するように問いかけた。
「……事件のこと、聞いてもいいですか? 撃った犯人は捕まっているんですよね?」
颯真さんは深いため息をつきながら、申し訳なさそうに答える。
「それが……逃走してまだ見つかってないんだ。俺が絶対に捕まえるから、安心して。」
「そうですか……。犯人の特徴とかって、どんな感じなんですか?」
私の問いに、颯真さんは一瞬口ごもる。そして、低い声で言った。
「ごめんね。被害者遺族には詳しいことは教えられないんだ。でも絶対、俺が捕まえるから。……だから、春華ちゃん。間違っても変なこと考えちゃダメだからね。」
私はただ頷くことしかできなかった。
颯真さんの言葉を聞きながら、私は天井を見つめていた。頭の中で何度も父との日々が思い返される。あの優しかった笑顔、叱られたときの真剣な顔、私を育ててくれたすべての時間。
父を奪った犯人がまだ自由の身だという現実が、私の心を苛んでいた。これからの私はどうすればいいのだろう。復讐心と理性が胸の中でせめぎ合う。