奪われた命、守りたい心
病院の待合室で、春華さんが到着するのを待つ間、プレゼントの入った袋を握りしめていた。ロビーに現れた彼女の顔は蒼白で、今にも崩れそうだった。
「お父さんは?」と震える声で聞かれるたび、胸が締め付けられるようだった。
「春華さん……ごめん。俺が側にいたのに、守れなかった。」
彼女は唇を噛みしめ、涙をこらえるように天井を見上げた。そして小さく微笑みながら、こう言った。
「橘さんが謝ることじゃないです。お父さんは最後まで立派に仕事をしたんだと思います。」
その言葉に俺は胸を打たれた。大切な家族を失ったというのに、こんなにも毅然としている。なんて強い人なんだ――。
ロビーでしばらく様子を見守っていたが、彼女の姿が見当たらない。不安になり辺りを探していると、隅の椅子に座り、小さく肩を震わせて泣いている春華さんを見つけた。
「春華さん……」
近づいても、彼女は顔を上げようとしなかった。その小さな背中があまりにも悲しそうで、俺は衝動的に彼女を抱きしめた。
「1人で抱え込まなくていい。泣きたいときは、泣けばいい。」
突然のことに驚いたのか、彼女は一瞬身体を硬直させたが、次第に力を抜き、俺の肩に顔を埋めて泣き続けた。嗚咽が止まるまで、俺はただ静かに彼女を支えた。
泣き疲れて眠るように静かになった彼女を見つめながら、俺は決意を新たにした。
「大和さん、俺が春華さんを守ります。そして、絶対に犯人を捕まえます。だから、安心してください。」