奪われた命、守りたい心

約束の夜、颯真と春華はレストランでディナーを楽しんだ。食事を終える頃、颯真は静かに袋を取り出し、春華に手渡した。

「春華ちゃん、お誕生日おめでとう。これ、俺からのプレゼント。そして……もうひとつ。これはお父さんから。」

「え……お父さんから？」

颯真は微笑みながら頷いた。

「そう。実は亡くなる日の朝、大和さんと話したんだ。日曜日が春華さんの誕生日だから、一緒にお祝いしようって。プレゼントも用意してるって言ってた。」

春華は驚きながら袋を開けた。中には綺麗な時計とメッセージカードが入っていた。


春華へ
誕生日おめでとう。
お父さんはいつも君を見守っているよ。君がどんな選択をしても、どんな道を歩んでも、お父さんは君を誇りに思っている。
これからも君らしく、素直な心を大切に生きていってほしい。君が笑っていると、それだけでお父さんは幸せだよ。



「お父さん……」

春華は涙が溢れるのを止められなかった。その姿を見た颯真は、そっと彼女を抱きしめた。

「泣きたいときは泣けばいい。俺をいつでも呼んでくれ。俺も春華さんの味方だから。」

「ありがとうございます……」

春華は颯真の温もりに包まれながら、静かに涙を流した。



涙が落ち着き、デザートを楽しんでいたふたり。しかし、春華の胸には引っかかることがあった。
ふとした瞬間に、彼女はその疑問を颯真に投げかけた。

「颯真さん、一つ聞いてもいいですか？ 父が殺された事件に田辺総理大臣が関係しているって本当ですか？」

その言葉を聞いた瞬間、颯真の表情が一変した。

「どうしてそれを？」

「父の荷物を取りに行く途中で、そういう噂を耳にしたんです。」


颯真は少し困ったように眉を寄せた。そして、静かに言葉を選んで答えた。

「心配されるようなことを聞かせてしまってごめん。でも、決定的な証拠がないから、断言はできないんだ。だから、事件のことは警察に任せてほしい。」



「任せたら、どうせうやむやにされるじゃない……」
春華は小声で呟いた。

「ん？ なんて？」

「いえ、なんでもないです。よろしくお願いします。」



春華の中の決意
その夜、帰り道で春華は強く心に誓った。
「お父さんが命をかけて守った真実。私が絶対に明らかにしてみせる。そして、犯人に必ず制裁を――。」

父の時計を見つめながら、彼女は自らの使命を胸に刻み込んだ。