奪われた命、守りたい心
5.恋の始まり
父の事件の真相を明らかにするため、春華は大学の授業の合間を縫って調査を始めた。
警察や報道では公表されないような細かな情報を集め、時には夜遅くまで資料と向き合う日々が続いた。
そんな中、颯真との交流も途切れることはなかった。
颯真は何かと理由をつけて春華を食事に誘い、彼女の心を支え続けていた。
ある日のランチタイム、颯真と春華はお気に入りのカフェにいた。
颯真が先にコーヒーを注文し、春華の分までそっと支払っているのを見て、彼女は少し驚いた。
「え、颯真さん、私の分まで払ったんですか?」
「気にしないで。こういうときは素直に『ありがとう』って言うんだよ。」
「……ありがとうございます。でも次は私が奢りますからね!」
颯真は優しく笑いながら、春華の目をじっと見つめた。
「春華ちゃんって、頑張りすぎるところがあるよね。たまには誰かに頼ってもいいんじゃない?」
「……そんなことないです。颯真さんがそばにいてくれるだけで十分です。」
その言葉に颯真の表情がふっと和らぐ。
「俺はいつでもそばにいるからさ。」
その瞬間、春華の心に温かい感情が広がった。自分でも気づかないうちに、彼への想いが大きくなっているのを感じた。
週末、颯真は春華を映画に誘った。父の事件のことばかり考えていた春華にとって、久々の息抜きだった。
映画館を出ると、夜空に星が輝いていた。
「星、きれいですね……」
春華が空を見上げると、颯真は彼女の顔を横目で見つめていた。
「星もきれいだけど……春華ちゃんの方がもっときれいだよ。」
「……っ!?」
突然の言葉に春華は頬を赤く染めた。
「な、何言ってるんですか! 恥ずかしいじゃないですか!」
「だって、本当のことだし。」
颯真は悪戯っぽく笑いながら、春華の手をそっと握った。
「俺、春華ちゃんとこうやって一緒にいるのがすごく楽しい。これからもずっと一緒にいられるような関係になりたいな。」
「……颯真さん……」
春華はドキドキしながらも、その手の温もりを受け入れるように握り返した。
ある日、颯真は改まった様子で春華に話しかけた。
「春華ちゃん、次の週末、俺と正式にデートしない?」
「えっ、デート……?」
「うん。恋人としての、ちゃんとしたデート。行きたい場所、考えておいてよ。」
春華は戸惑いながらも、心の底から嬉しさが溢れ出した。
週末、ふたりはおしゃれな街並みを散歩したり、美味しいレストランで食事を楽しんだりした。デートの終わり、颯真が春華を家まで送る途中、彼は急に立ち止まり、真剣な表情で言った。
「春華ちゃん、俺は君のことを本気で好きだ。君がどんなに辛いときでも、どんな選択をしても、俺はずっと君の味方でいたい。」
「……颯真さん……」
颯真の言葉に感動した春華は、思わず彼に抱きついた。
「私も……私も、颯真さんのことが大好きです。いつも支えてくれて、本当にありがとう……」
ふたりはその場でそっとキスを交わした
春華は父の事件の調査を続けながらも、颯真と一緒にいる時間を大切にした。お互いに支え合い、励まし合いながら、少しずつ距離を縮めていた。