拳から恋
「……ええ、そうですが何か?」
潔く認めた方がこの場合、円滑に……とまではいかなくとも、無駄に体力を使う可能性は低いはず。
けどそんな甘くないよね──
認めたのに、今しがた来た速度よりもはやく振りかぶった腕が真っ直ぐ向かってきて──
「……らぁ!!」
瞬時にとった半身の構えで、掌底で受け流したところにカウンターをしに入った。
しかし、体勢を崩したまま、黒髪くんはわたしの拳をかわしたのだ。
「……ッはは、お前慣れてんな」
次の一手が来る前に……そう思った矢先、
パサッ──
団子に結んでいたわたしの髪がほどけ、ゴムが床に落ちていった。