拳から恋
すでにぶっ壊れている教室の扉は、壁にただ立て掛けてあるだけで、開ける手間が省けた。
なんの躊躇いもなしに教室へ入れば、
「あ?」
「んだあの眼鏡野郎は」
雑談でざわついていた教室全員の雰囲気が、威嚇モードに切り替わった。
わかってる、わかってる。
知らん人来たら、そうなるのは。
だからちゃんとしますよ。自己紹介。
「はっ……花蔭聖と、申しますっ……よろ、宜しくお願い致します」
きっちり90度のお辞儀をして、完璧な自己紹介。
顔を上げれば、全体がぶわっと笑いに包まれた。
「コイツ、噛みカミじゃん!」
「どうしたぁ?キンチョーしちゃったぁ?っあはは!」
「こりゃまたくそ真面目なヤツが来たな。見た目から激弱ッ」
「かわいそーだから言ってやるなってっ」