何でも屋

恋愛の悩みの人

(あーどうしよう…!)
妖理小学校4年、鈴鹿紅里が思った。
実里は今、恋の悩みがあった。相手は原田颯介 4年。イケメンで運動神経抜群で女子から大人気。
きっかけは一週間前。

「これ、落ちたぞ。」
颯介は紅里から落ちたハンカチを拾った。
紅里は人れぼれをした。
それだけだった。

(あーかっこいいなぁ。颯介君~)
紅里は一日中ずっとそのことを思ってた。颯介とは同じクラスだ。授業中も颯介を眺めていた。
帰り道でもずっと思ってた。
「あーか―り!なぁーに考えてるの~?」
幼なじみの加藤ことねが走り寄って言った。
「あっことね。何でもないよ~。」
「ねぇねぇ紅里知ってる?あの『何でも屋』の話。」
「『何でも屋』?」
「えぇー!?知らないの!?」
ことねは大げさに叫んで言った。
「その『何でも屋』は何でもあって、その店主は何でも知っていて何でも教えてくれるって。」
「へぇ~…。」
「噂ではね、妖神社の森の奥にあるってさ。」
「ふ~ん。」
「あ、帰らなきゃ。んじゃバイバーイ。」
「バイバーイ」
(何でも教えてくれるか。)
紅里はちょっと興味があった。
「ちょっと行ってみるか。」
紅里は早歩きで帰った。

「ここか…。」
紅里は妖神社に着いた。紅里はあの後、家に帰ったらすぐに出かけた。紅里の家と妖神社は近かった。
「確か森の奥に…。」
妖神社はそこそこ大きい神社で、お参りする所よりも森の方が広いのが特徴。よく妖神社の森の中にはお化けが住んでるとか、異世界に行ける扉があるのだとか、色々な都市伝説があった。
「本当なのかな~…?」
紅里は半信半疑だった。大体の噂は検証してみたが、どれも大嘘だった。
紅里は言われた通りに森の中に入っていった。
森の中は真っ暗で、辛うじてのは自分の手だけ。
しばらく進んでいると急に明るくなった。
周りを見渡すと、そこには一軒の店があった。その店には大きく看板に『何でも屋』と書かれていた。
「ホントにあったんだ…。」
紅里は少し怖かったが勇気を出して店の中に入っていった。
店の中は薄暗く、見たこともない本や不思議な置物などが置かれていた。
「なにこれ…。」
紅里は怖くなった。すると店の中から人が出てきた。
「いらっしゃい。何か欲しいものはあるかい。」
男か女なのかよくわからない髪型をしていて、前髪で左目が隠れている。右目はジト目でクマができていて、着物ぽい服を着ていた。
そして口から八重歯が出ていた。
「あなたは…?」
「私は彼岸。ここの店の店主です。」
ピアスをつけているようで左耳に小さい筆がぶら下がっており、右耳には本がぶら下がっていて揺れていた。
「あっ噂の…。」
「知りたいことでもいいよ。」
彼岸の言葉に紅里はドキッとなった。
「…知りたいことならあります。」
彼岸はニヤリと笑った。
「私、知りたい人がいて、その人のことを教えてください。」
「その人の名前は?」
「原田颯介くん」
彼岸は本を取り出して、ぺらぺらと紙をめくった。そしてあるページで手を止めた。
「わかりました。お教えいたしましょう。」
「本当…⁉」
「ただし条件があります。」
紅里はビクッとなった。
「この店ので知ったり、買ったりしたことは誰にも言ってはいけません。言ったら『お代』を頂きます。」
彼岸は人差し指を口にあてた。
「…いいですよ。」
「はい、ではお教えいたします。」
紅里は唾をのんだ。
「原田颯介。10歳。誕生日は6月26日。好きな食べ物は唐揚げ。嫌いな食べ物はきのこ。好きなスポーツはサッカー。
好きな女の子は―」
「好きな女の子は―?」
「加藤ことね」
そう言われ紅里に稲妻が落ちた。
「ことね…?」
「はい」
「え、嘘……」
「嘘じゃありません。」
紅里は青ざめた。大好きな人が好きなのは、大の仲良しのことねだった。
「あなたにぴったしな、いいものがあります。」
「………はい?。」
彼岸は戸棚から赤色の糸を取り出した
「それは?」
「これは『縁結びの糸』です。」
「『縁結びの糸』?」
紅里は不思議に思った。
「使い方は、まず紙に好きな人の名前を書いて、もう一枚に自分の名前を書く。次に、二枚の紙をこの糸で結びつける。
そうすると紙に書いた人同士は結ばれます。」
「へぇー……」
「逆に別れさせたいときは、紙には別れさせたい人を書き同じように作り、糸切狭で糸を切ってください。そうすれば書いた人同士は
別れます。」
「………欲しいです。」
すると彼岸はまたニヤリと笑った。
「お金はいりません。どうぞ。」
紅里は糸を受け取った。
「ただし注意事項があります。別れさせるのはいわば呪い。『人を呪わば穴二つ』。それ相応の不幸が起こります。」
「わかりました。」
「では、さようなら。」


紅里が気がついて周りを見渡すと、そこはいつもの妖神社だった。
「あれ…夢……?」
手元を見ると赤い糸があった。
「夢じゃない……!」
紅里は走って家に帰った。

紅里は部屋に戻ると早速言われた通りに作り始めた。
「えーとっ。確か、好きな人を紙に書いて。」
紅里は紙に『原田颯介』と書いた。
「で、もう一枚に自分の名前を」
もう一枚に『鈴鹿紅里』と書いた。
「そして結ぶ。っと」
紅里は赤い糸を書いた紙と紙を結びつけた。
「これで本当に結ばれるのかな……?」

次の日―
「紅里、ちょっといいか…?」
原田颯介が声をかけた。紅里はドキドキした。
そして連れられて体育館裏に行った。
「…あのさ紅里。俺、前から紅里のことが好き。俺と付き合ってくれ!!」
紅里はうれしくてたまらなかった。
「はい!!もちろんです!!」
それから颯介と紅里は付き合うことになった。
紅里は毎日が楽しくなった。
(本当にだったんだ。)
しばらくすると転校生がやってきた。名前は一ノ瀬瞬。とてつもないイケメンだった。
「かっこいい…」
紅里はすかっり好きになった。颯介はもう眼中になかった。
数ヶ月経つと驚きの話がでた。
「ことねと瞬くんが付き合ってる⁈」
「大声出さないでよ。少し前から付き合ってたの。」
ことねが人差し指を口にあてながら言った。
紅里はショックを受けた。ことねへの嫉妬があふれ出そうだった。
(なんで、ことねばっかり好かれているのよぉ。)
紅里はしばらくするとあることが思い浮かんだ。
(そうだ、あの糸を使えば。)
紅里は大急ぎで家に帰った。部屋に駆け込みすぐに糸を取り出した。
「そうだ、そうだ。瞬くんとことねなんか別れちゃえばいい。」
紅里は二つの紙に『加藤ことね』『一ノ瀬瞬』と書いて、糸で結びつけた。そして裁縫道具から糸切狭を取り出した。
ちょきんと糸を切った。

「私、一ノ瀬くんと別れたの…」
ことねは悲しそうに言った。
「うん、うん。」
あいずちをうって心配そうに紅里はしているが、本音は喜んでいた。
(やったぁ~✰別れたぁ~!!!!!)
心の中で喜んでいると颯介に話しかけられた。
「おい、紅里。ちょっといいか。」
「なに?」
「俺、お前と別れるわ。」
突然の言葉に紅里はショックを受けた。
「な、なんで?!」
紅里は泣きそうになった。
「だってお前、全然かわいくねぇ」
紅里はわんわん泣いた。
「泣いても無駄だ。俺にはもう彼女いるしな。」
出てきたのはことねだった。
紅里はさらに顔がくしゃくしゃになるまで泣いた。
家に帰ってからは布団にくるまり泣いた。
しばらく泣くと彼岸のある言葉を思い出した。
「別れさせるのはいわば呪い。『人を呪わば穴二つ』。それ相応の不幸がおきます。」
紅里は悔しい気持ちでいっぱいになった。すると紅里はあることを思いついた。
「そうだ。すべてはあの店。『何でも屋』のせいだ。」
紅里は自分のスマホを出して『何でも屋』の悪口を書いた。
「悪口を書いてあの店をつぶしてやる!!」
書いた投稿をインターネットにアップした途端、目の前が真っ暗になった。
「え、何…?」
辺りを見渡しても真っ暗。すると彼岸がやって来た。
「あれまぁ。言ってしまいましたねぇ。」
「でも、インターネットだから別に誰かに言ってないですよ。」
紅里は冷や汗をかいた。
「いや、言ってますよ。ほぼ。」
彼岸はため息をついた。
「では、約束どうり『お代』もらいますね。」
すると彼岸は右目を隠していた前髪を上げた。
その目はつりあがって、白目が黒い。黒目は真ん中に猫みたいな目で中心は黄色く外側につれて赤くなっていた。
「ひ、ヒェッ。」
彼岸はその右目で紅里をじっと見た。すると紅里の口から白い光が出た。彼岸はそれを拾いニヤニヤとした。
「では、さようなら。」
気づけば元の部屋に戻った。
「紅里?どうしたの?」
心配した母親がやって来た。すると紅里はきょとんとして言った。
「あなた、誰?」
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