元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。


「威嚇すれば怯むと思っている。女であるから自分より劣っていると誤解している。貴方と話すだけ時間の無駄ね。クレアを出しなさい。皇族暗殺未遂で処刑してもらわないと」

 私が告げた言葉がよっぽどムカついたのか、ギルド長は包丁を投げてきた。
 少し私の髪を掠って、プラチナブロンドの髪が床に落ちる。

「威嚇しても無駄と言ったでしょ。私の体に傷をつけていたら、このギルドごと潰れていたわよ。皇族暗殺未遂で、あなたの親族もみんな処刑ね」
「チッ!」

 私たちのやり取りが聞こえたのか、奥からクレアが出てきた。
 彼女の憂いを帯びた薄茶色の瞳を見た途端、怒りが込み上がってくる気がした。 
 暗殺など裏の仕事をする自分の人生を憂いて自分に酔っているような目つきだ。
(裏の仕事は1度の失敗が命取りなのよ⋯⋯)

 黒いパンツを履いて動きやすそうな格好をしていると男性のようにも見える彼女は、私の与える仕事を無事に果たせそうだ。

「皇妃殿下、私は皇命に従ったまでです。それに、私はメイドのフリをして弱毒性の毒草を食事に盛っただけです。皇妃殿下に対する暗殺命令は出ておりませんでした」

 彼女が弁明してきた言葉に、私はアレキサンダー皇帝が私に毒を盛った事を確信した。
 今、心臓を握り潰されそうなくらい苦しい。
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