元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。


 ♢♢♢

 隠し通路は、横に水が細く流れていてどこまでも続いているようだった。
 通路にはわずかな灯りしかなく、ほとんど何も見えなくて怖いが進むしかない。

 皇族になっても隠し通路さえ教えて貰えなかったなんて、本当に私は信用されなかったようだ。

 しばらく歩くと遠くに鳥の鳴き声が聞こえてきた。

 城内では聞いたことのない種類の鳥の鳴き声なので、おそらく通路を抜ければバラルデール皇城外だ。

 瞬間、何かを壊した大きな物音が遠くからした。

 急に進行方向から走るような足音が聞こえてくる。
(嘘? もう、私がここにいることがバレたの?)

 処刑に関わる人間は全員、ネタで脅して口封じできているはずだ。
 プルメル公爵家一族がクレアを見て、うるさく騒がないように喉を焼いておくように伝えておいた。

 クレアは男性のようにガッチリしている体型だから、誤魔化せるかと思ったが偽物だと気がつかれてしまったかもしれない。

 「モニカ!」
 聞こえてきた、低い声には聞き覚えがあった。

 アレキサンダー皇帝だ。
 地上で馬に乗って、出口の方に先回りされてしまったのだろう。

 (嫌だ、もう陛下と会いたくない)
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