元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。

23.このような男に私の人生は預けられない⋯⋯。

 無防備に背を向けるアレキサンダー皇帝に胸が苦しくなった。
 私を捨てようとした彼を見限ったつもりだった。

 「モモのご主人」失格な彼なのに、縋られると揺らいでしまう。

 彼の言っていることは、驚く程自分勝手。
 それなのに、従ってしまうのは私が元犬だからだけではない
 陛下が私を家族にしてくれる可能性を探ってしまう。

 (森でひたすらにルイを追っていた時、ルイが駆け寄って私を抱きしめていてくれたら⋯⋯)

 犬である時に夢見ていたような光景。

 あれ程冷たく接して来たと思えば、急に私のことを愛しているようなことを言ってくる。
 もしかしたら、ただ、何か失う経験をした事がなくて私に執着しているだけなのかもしれない。
(本当に理解できない人⋯⋯)

 ナイフを手に持ち、陛下の髪を切る。
 女とは違って、難しい。
 もはや、傷をつけないように切るのが精一杯だ。

「陛下⋯⋯プルメル公爵家の処刑は滞りなく行われましたか?」
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