元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。
やはり犬のモモだった時の記憶が蘇って以来、新しい主人であるアレキサンダー皇帝に対して過剰な期待をしている。
陛下は結婚式もしないのに初夜は行う。
私を不妊にする毒を盛りながら、房事の時には訪れる。
私が会いたいと言った時には会ってくれない。
私がいなくなると思ったら、急に惜しくなって気まぐれにかまってきただけだ。
私はもう犬じゃない、自分で自分の人生を選べる。
たった1ヶ月と少ししか過ごしていなくても、彼がどれだけ身勝手な人間かは理解できた。
どうせ、また1ヶ月後には気まぐれに私を避け始めるだろう。
(このような男に私の人生は預けられない⋯⋯)
「大丈夫です⋯⋯陛下、今日はもう疲れたので休ませて頂けませんか」
「分かった⋯⋯モニカは髪を切るの上手だな。また切ってくれ」
褒められて嬉しい気持ちを抑えながら、私は陛下にそっとお辞儀をした。
(これで、最初で最後よ。さようなら、私のご主人様⋯⋯)