元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。

24.陛下の気まぐれな愛に付き合うのが怖いのです⋯⋯。

 陛下が私をじっと見つめて口づけをしようとしてくるので、私は思わず避けた。
「私を抱かないのではないのですか?」

「寒いから強く抱きしめて欲しいと言っていたではないか? それに、俺も魔性の悪女に惑わされて見ようと思ってな」

「私は悪女ではありません。自分の皇城脱出という目的の為に自分の持つ女の武器を使っただけです。反省すべきは、バラルデール帝国の夜間警護の騎士が自分の役割を瞬間でも忘れてしまう平和ボケ加減ではないですか?」
 
 私はベッドから立ち上がり、このバラルデール帝国の問題点を彼に説いた。

「戦場に赴く第1騎士団などと違い、主に警護や護衛にあたる近衛騎士は危機感が足りません。帝国の皇城を攻められる事など想定していないのが丸わかりです」
 バラルデール帝国は世界一の強国だ。
 確かに1カ国でこの国を落とすのは不可能だろう。

「なぜ、今、真夜中の部屋に2人きりだというのに、そのような色気のない話をしているのだ?」

 陛下は先程まで怒りのままに私を抱こうとしていたが、今は笑っている。

 ベッドに座って、どうやら私の話を聞いてくれそうだ。

 この1ヶ月で帝国のあらゆる問題点に私は気がついた。
 
「なぜ、レイモンド・プルメル公爵が先皇陛下を暗殺したか分かりますか? それは政治の方向性が違ったからではありません。陛下を1日でも早く皇帝にする為です」
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