元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。

26.モニカ⋯⋯俺は君を罰しないよ。(アレキサンダー視点)

 モニカを連れ戻して、髪を切って貰い少しは心が近くなった気がしていた。

「皇妃殿下が動きました⋯⋯」

 俺は自分が愛していると言っているのに、彼女がまだ逃げて行く理由を理解していなかった。
 昔から母に欲したものは全て手に入ると教えられて来て、実際にその通りだった。
 対して欲してないものも、気がつけば自分の手の中にあった。
 でも、今、欲しくて気が狂いそうなのに、モニカは俺から逃げて行こうとする。

 真っ暗な庭園で、護衛騎士を籠絡するモニカは見た事もないくらい妖艶だった。
 (本当に魔性の悪女だな⋯⋯)

 俺の事を名前で呼びもしない彼女が、恋人のように騎士を名前で呼んでいるのは演技だからだ。
 そう理解した時にモニカは俺の前では演技をしないで、本当に最初は慕ってくれていたのではないかとほのかな望みを抱いた。

 俺は彼女に俺を慕っていた気持ちを思い出して欲しくて、彼女を抱こうとしたが拒絶された。

 そして、彼女がまだ1ヶ月程度しかバラルデール帝国にいないのに、俺以上に帝国の問題点に目を向けていることに驚いた。

 彼女は恐ろしく頭が切れる。

 その割に出口の鍵を持たずに隠し通路に入ったり、先程も裸足で城門の外へ逃亡しようとしていた。
 なんだか、彼女の行動は行き当たりばったりに見える事もある。
(全く目が離せないな⋯⋯)
< 127 / 159 >

この作品をシェア

pagetop