元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。


 俺は今、彼女がジョージア・プルメル公子を逃したのではないかと疑っている。
 断頭台での処刑において頭から布を被らせるようになったのは2年前からだ。
 罪人が自分が殺人を犯した弁明に、断頭台での公開処刑の際に首を切った後の死人と目があって操られたという弁明をすることがあった。

 そして、裁判官がその弁明をまともに聞き入れてしまって、俺は処刑の際に布を頭から被せることにした。
 必ず同じような弁明をしてくる罪人が続くと思ったからだ。

(罪人に布を被せるという処置が利用された可能性も⋯⋯)

 騒然とした議場から立ち去りながら、俺は祈るような思い出モニカの手を握った。

「モニカ⋯⋯処刑人の死体安置所に行かないか?」
 俺の中で彼女が自分がリスクを追ってまでジョージア・プルメル公子を逃した可能性を消したかった。

 それではまるで2人が思い合っていて、モニカはジョージア・プルメル公子と一緒になる為に俺から逃げようとしているみたいだ。

「行きません。陛下がお気づきになった通りの事実があると思います。私も後ろ暗いことをして露見した時は相応の処分を受ける覚悟でしています」
 俺はモニカが自分の首が飛ぶ覚悟で、ジョージア・プルメル公子を逃したことを確信した。
 それは俺にとっては、受け入れ難い真実だった。

「モニカ⋯⋯話そう。君の話を聞きたい」
 俺は自分の執務室に彼女を連れて行き、2人きりになった。

 ソファーに彼女を座らせ、祈るような気持ちで手を握ろうとした。
 しかし、彼女は俺の手を振り払い首を振った。

「話しません。たとえ殺されても、彼の居場所は吐きません」
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