元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。
確か私より歳は3歳年上で、大人の色気というか雰囲気のある方だ。
流石は帝国の皇帝と言ったところで威圧感があり、私は少し緊張した。
若くして彼が皇位を継いだのは、先の皇帝である彼の父親アルガルデ・バラルデールが突然死なさったからだ。
女嫌いと噂される彼も皇位を継いだことで、お世継ぎを望まれたのだろう。
そこで、お声がかかったのが私だ。
「アレキサンダー・バラルデール皇帝陛下に、モニカ・マルテキーズがお目にかかります。本日からよろしくお願いします」
「美しいとの評判だったが、どこにでもいそうな女だな」
私を睨みつけると、アレキサンダー皇帝はスタスタと皇城に向かった。
冷たい方だと聞いていたが噂は当てにならない。
陛下は、わざわざ私を迎えに来てくれた優しい方だ。
女神のように美しいと誰もが言う私の事を、どこにでもいそうな女だと言ってくれて親しみを持ってくれている。
犬としての記憶が蘇ってから、何もかもがキラキラして見える。
確かに犬だった時の私は、人間のしてくれる事にいつも感謝ができていた。
王女として育ち、かなり傲慢になり過ぎていた気がする。
「陛下、私のことはモモと呼んでください。短くて呼びやすいでしょうし⋯⋯」