元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。
目を瞑り覚悟を決めたようなモニカを罰するつもりはない。
たとえ彼女の心が他の人間にあっても、俺は彼女を側に置きたい。
「モニカ⋯⋯俺は君を罰しないよ。でも、なんでそんな⋯⋯」
言葉は続かなかった。
モニカは俺の妻でありながら他の男と通じていた。
怒りが込み上げて来て、彼女を罵倒したくなったが必死に抑えた。
そのように怒りに任せて彼女を非難したら、ますます彼女の心は俺から離れるだろう。
ただ、彼女に嫌われるのが怖いから理由を聞くことしかできない。
このような情けない自分は初めてだ。
世界で一番尊重される自分は誰もが屈すると思っていたが、俺は今完全にモニカに屈している。
「彼は私にとって大切な友人なので生きていて欲しかったのです。それに、私は親の罪は子にまで及ばないと思います」
友人がいたことはないが、命を賭ける程に大切な存在を友人と呼ぶ彼女には違和感しか感じない。
モニカは俺とは考え方が違うところがある。
彼女は自分は目的の為に女を利用しているだけだから、悪女ではないと高らかに言っていた。
俺はそういう女を悪女と呼ぶと思っている。
さらに、モニカは皆が暴君と呼ぶ俺を暴君だとは思っていないらしい。
彼女は俺には理解できない価値観を持っているのに、彼女を知りたいという衝動を止められない。