元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。
 
入浴を済ませ部屋で、今後の対策について考えていた。
父はおそらく新たな刺客を送ってくるだろう。
私が便りの1通もよこさない事に対して、不満に思っているはずだ。

ノックの音がして、返事をするとアレクが部屋に入ってきた。

「アレク、何かあったのですか?」
「いや、少しでもモモと一緒にいたくて⋯⋯って髪の毛びしょびしょじゃないか。床が水浸しだぞ」
 確かに髪の毛はびしょびしょだが、どうせいずれ乾く。
 床に水滴は落ちているが、水浸しというほどじゃない。

 普段は丁寧にルミナにタオルで挟んで水滴をとってもらっているが、自分でそのような面倒なことはしたくない。
 私は思いっきり頭を振って、水滴を飛ばした。
 
「な、何するんだ! 本当に犬みたいだな」
 別にアレクを攻撃しようとした訳ではないが、水滴が当たったアレクは攻撃されたと思ったようだ。

 アレクが呼び鈴を鳴らして、メイドにタオルを持って来させた。
 私を椅子に座らせて、丁寧にタオルで髪の毛を挟んでくる。

「ありがとうございます。でも、朝までには勝手に乾くから何もしなくても大丈夫だと思いますよ」
「大丈夫じゃない、風邪引くぞ。それにネグリジェも濡れてるじゃないか⋯⋯」

 確かに白い薄手のネグリジェは胸の上あたりまでびしょびしょに濡れて透けている。
「この傷⋯⋯そうだ、あの時もモモは俺のことを庇ってくれたんだよな」
「背中の傷ですか? 責任なんて感じないでください。別にどうってことない傷です」
 私の言葉を無視するようにアレクが私のネグリジェを脱がそうとしてくる。

「やめてください。変態ですか?」
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