元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。

29.モモをそのような体にしたのは間違いなく俺だ。(アレキサンダー視点)

 モニカとカイザーが驚く程、仲良くなっていて驚いた。
 カイザーがこれ程、気を許すのは珍しい。

 モニカは優しそうに微笑んでいて本当に聖母のようだ。

 俺の前では気まずそうに強張っている事が増えていたのに、出会った頃のように柔らかい表情をしている。
 
 俺のことも名前で呼んで欲しいと言ったら、「アレク」と愛称で呼ばれて心臓が止まりそうになった。

 今まで誰も俺を愛称で呼んだ人間はいない。

 両親も俺を帝国の次期皇帝として見ていて、どこか距離をとって接していた。


 彼女が歩みよってくれたのが嬉しくて、「モモ」と呼んでみたら嬉しそう微笑んでくれた。

 3人で過ごしていると、カイザーが歳が離れているせいかまるで親子で散歩しているような気持ちになった。

「カイザー、こんなところにカブトムシがいました。森に行かないと中々お目にかかれない方ですよ」
 モニカが手の上に焦茶色の虫を乗せて、爛々とした表情をしている。
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