元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。

32.今、モモ以外の人間のことはどうでも良いんだ⋯⋯。(アレキサンダー視点)

「アレクが誰より想っているのは自分でしょ」
モモはそう言うと俺の唇を少し舐めた。
(これがご褒美ということで、納得しろって事なんだろうな⋯⋯)

彼女を縛りつけても日に日に距離は遠ざかるばかりだ。
俺ばかりが彼女のことを考えている。

 俺が自分勝手で自己中心的であることは自覚している。
それでも、俺は自分と同じくらいモモを大切だと思っていた。
(毒を盛った俺が何を言おうとこの気持ちが伝わる気がしない⋯⋯)

「スラーデン伯爵の爵位を剥奪し国外追放にするにした」
俺の言葉にモモが苦笑いする

「首を切ると脅せば、何か吐いたかもしれませんよ? 中途半端な処罰ですね。生きるか死ぬかの罰を犯した彼にとってはラッキーだったでしょうね」

 モモは俺よりも多くをみえていて洞察力が鋭い。
 俺もスラーデン伯爵の裏に誰か潜んでいるのは感じ取っていた。

 しかし、そこは曖昧にしてしまってバランスを保つのが良いと思った。
プルメル公爵一族を処刑した後で、帝国は処刑に対して敏感になっている。
俺が言い淀んでいると彼女は少し呆れたような顔をした。
 
 
「アレクは今、私のご主人様です。あなたの意向に従います」
 モモがぺこりと頭を下げるが俺が欲しいのはそんな彼女の反応じゃない。
(ただ、俺のことが好きだと言って欲しい)
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